ワキガ・多汗症対策にボトックスはどう使われる?効果のメカニズムと費用・リスク

2025.9.5
美容コラム

目次

多汗症とワキガの違いと治療適応

多汗症とワキガは汗の種類や原因が異なり、治療内容も大きく異なります。まずは両者の違いを整理したうえで、それぞれにボトックス注射が適応されるケースを見ていきましょう。

「わきが」と「多汗症」はどう違う?症状・原因・見分け方

わきがは、アポクリン汗腺から出る汗が皮膚の常在菌に分解されることで発生する強い匂いが特徴です。汗そのものは無臭ですが、皮膚の上で分解される過程で独特の匂いを放つため、人によっては非常に気になることがあります。一方で多汗症はエクリン汗腺の働きが過剰になることで、大量の水っぽい汗が出る症状です。匂いよりも「脇の汗じみ」「肌着のびしょ濡れ」といった実生活での不快感が強く現れます。多汗症は緊張や気温変化に影響されやすく、わきがは遺伝的な体質が大きく関与している点も違いのひとつです。どちらの症状があるかによって、治療の方向性は大きく異なってきます。

ボトックス注射が使えるのはどのタイプ?(症状別の適応)

ボトックス注射は、ボツリヌスという成分によって神経伝達物質の働きをブロックし、汗腺への刺激を抑えることで発汗を減らします。この仕組みが効果を発揮するのは、エクリン汗腺の活動によって脇汗が大量に出る「多汗症」です。多汗症の方がボトックス注射を受けると、汗の量が減り、衣類の汗じみや不快感が軽減されると実感するケースが多く見られます。一方でわきがに関しては、匂いの原因となるアポクリン汗腺に直接作用するわけではありません。そのため、ボトックスは汗の減少によって匂いが「軽減される」ことはあっても、「完全に消える」わけではなく、わきがの根本的な治療にはなりにくいというデメリットがあります。つまり、ボトックス注射は「多汗症には非常に有効」「軽度のわきがには一時的な対策」といった位置づけになります。

ボトックス注射の仕組みと「効果」はあるのか?

注射を打つだけで汗が減るとされるボトックス治療。では、その仕組みはどうなっているのでしょうか。また、「本当に効果があるのか?」という疑問に対して、実際の医師の見解や効果を感じにくい理由などもあわせて見ていきましょう。

ボトックスで汗が減るメカニズム

ボトックスは、ボツリヌス菌から作られた成分を使った注射です。この成分には、神経伝達物質の働きを一時的に止める作用があります。多汗症に対しては、脇の下にあるエクリン汗腺へ向かう神経の信号をブロックすることで、汗の分泌を抑えます。注射後は、2〜3日ほどで脇汗の量が徐々に減少し、1週間ほどで最大の効果を実感できることが多いです。この効果は個人差がありますが、一般的には3〜6か月程度持続します。また、治療で使用されるボトックスの量は60〜100単位が標準的で、医師が状態に応じて調整します。注射によって汗の量が減れば、それに伴って匂いも軽減されるため、軽度のわきがや脇汗に悩む方にとって有効な対策となります。

わきがにも効果がある?個人差と医師の見解

ボトックスは汗を抑える効果があるため、匂いもある程度減少することがありますが、根本的に匂いの原因となるアポクリン汗腺には直接作用しません。そのため、重度のわきがに対しては「効果ない」と感じる人も少なくありません。医師の中には「軽度のわきがに対しては一定の効果が見込めるが、根治を望むのであれば外科的治療も検討すべき」とアドバイスすることもあります。個人差が大きく、ボトックスだけで匂いの悩みが解消される人もいれば、改善が見られない人もいるため、まずは医師に相談し、施術後の反応を確認しながら今後の治療方針を決めるのが賢明です。

「効果ない」と感じる理由と改善のヒント

ボトックス治療後に「効かない」と感じる理由としては、いくつかの原因が考えられます。第一に、使用するボトックスの単位が少なすぎる場合、十分な発汗抑制効果が得られません。第二に、注射が皮膚の浅い層にとどまっており、汗腺に十分届いていない可能性があります。さらに、まれにボツリヌス製剤に対する抗体が体内で作られ、薬剤が効きにくくなることもあります。これを避けるためには、施術の間隔を4か月以上あけることが推奨されています。また、経験豊富な皮膚科や美容整形医に相談し、自分の症状に適した注入量や注射ポイントを見直すことで、効果を最大限に引き出すことができます。

ボトックス注射の「おすすめポイント」と向いている人

手術をせずに汗や匂いを抑えたい方にとって、ボトックス注射は検討される治療法の一つとされています。ここでは、ボトックスが特におすすめな理由や向いている人の特徴を解説していきましょう。

脇の汗・におい対策におすすめな理由

ボトックス注射の最大の魅力は、施術の手軽さにあります。治療は比較的短時間で行われ、麻酔もほとんど不要で日常生活に支障をきたすことがありません。注射によって汗の量が抑えられれば、脇汗による不快感や洋服の黄ばみ、匂いの軽減が期待できます。さらに、効果が出るまでの期間が短く、注射後数日で発汗が減少してくる点も利便性が高いです。また、施術のタイミングを調整すれば、夏場の汗の多い時期だけ汗を抑えるといったピンポイントの対策も可能です。これらの特長から、初めて汗対策を試す方や、短期間だけ汗や匂いをコントロールしたい方には特におすすめの治療法といえるでしょう。

「手術は嫌だけどニオイや汗を抑えたい」人に最適

ボトックス注射は皮膚を切らない非侵襲的な治療法です。整形手術に抵抗がある方でも短時間の施術で完了するため、心理的なハードルも低くなります。軽度から中度の多汗症に悩む方であれば、一度の注射で数か月間は汗の量が抑えられるため、定期的なメンテナンスだけで快適な生活が維持できます。特に「手術をするほどではないけれど、汗や匂いを何とかしたい」と感じている方には、ボトックスがバランスの良い選択肢となります。また、仕事が忙しく長期の休みが取りにくい方や、傷跡を残したくない方にも適しています。

わきが治療としての位置づけと限界

わきがに対してのボトックス注射は、根本的な治療ではなく「補助的な対策」にとどまります。匂いの元となるアポクリン汗腺自体を破壊したり除去したりするわけではないため、汗が減ることで匂いもある程度抑えられるケースはありますが、重度のわきがにおいては効果を感じにくい傾向があります。一方、わきがの程度が軽い方であれば、注射によって症状が軽減することもあります。ただし、数か月ごとに再注射が必要な点や、効果が切れた際には匂いが再発することを理解しておく必要があります。そのため、ボトックスは一時的な対策としては有効ですが、根本治療を希望する場合には、他の治療法と組み合わせて検討するのが現実的です。

効果・持続期間の目安と注射頻度

ボトックス注射を受ける際、どのくらいで効果が現れるのか、またどの程度持続するのかは非常に気になる点です。ここでは、効果の出るまでの期間や再注射の目安などを詳しく見ていきましょう。

効果が出るまでの日数と実感タイミング

ボトックス注射の効果は、早い人で2日後から感じ始め、遅くとも1週間以内には明確な汗の減少を実感することができます。脇汗が減ることで、日常生活の快適さが大きく向上し、洋服の汗じみや匂いによるストレスも軽減されます。実際には注射後3〜4日で「汗の量が減少した」と感じる方が多く、通勤時や仕事中の不快感が改善されたという声も多く聞かれます。施術から数日で結果が出るというスピード感も、ボトックスの人気の理由のひとつです。

効果持続の平均期間(多汗症/わきが)

ボトックスによる汗抑制効果は、一般的に3〜6か月程度持続します。多汗症に対しては効果が安定して続く傾向があり、場合によっては半年以上持つこともあります。一方で、わきがの場合は匂いの軽減に限界があるため、効果を感じる期間も短くなる傾向があります。いずれにしても、汗の量や匂いが戻ってきたと感じたら、再度注射を検討するタイミングといえるでしょう。長期間にわたり一定の効果を維持するためには、医師と相談の上、計画的な再施術を受けることが望まれます。

年に何回受けるべき?再注射の目安

効果が薄れてきたと感じたら、次回の注射を検討する目安となります。多くのケースでは、年に1回から2回の頻度でボトックスを受ける方が多いです。特に夏場や緊張が多い季節など、汗を抑えたい時期に合わせて施術のタイミングを決める人もいます。また、あまり短い間隔で何度も注射すると、ボツリヌス成分に対する抗体ができてしまい、次回以降に「効かない」となるリスクがあるため、最低でも4か月以上の間隔を空けることが推奨されています。自身のライフスタイルに合わせた施術計画を立てることで、継続的に快適な生活を送ることが可能になります。

副作用・わきが治療としての「デメリット」

治療を受けるうえで気になるのが、副作用やデメリットの有無です。安全性が高いと言われるボトックス注射にも、注意すべきポイントはあります。ここでは、治療前に知っておくべきリスクや限界について見ていきましょう。

注射による副作用の可能性と対応

ボトックス注射は比較的安全な施術として知られていますが、まれに副作用が起こることがあります。注射部位に軽い腫れや赤み、内出血が見られることがあり、これらは数日〜2週間程度で自然に消失することがほとんどです。さらに、注射の深さや部位によっては、違和感や痛みを感じることもあります。ごくまれにですが、注射を繰り返すことでボツリヌス製剤に対する抗体ができ、効果が現れにくくなるケースもあります。副作用が強く出た場合にはすぐに医師に相談し、必要に応じて治療方針の見直しを行うことが大切です。

わきが根治はできない?限界と補助療法

ボトックスは汗の量を抑えることには効果を発揮しますが、わきがの原因であるアポクリン汗腺には直接作用しません。そのため、匂いの根本的な除去には限界があります。軽度のわきがであれば、汗の減少とともに匂いもある程度抑えられる可能性がありますが、中度〜重度の場合には、ミラドライや外科手術といったより根本的な治療が必要になります。ボトックスはあくまで対症療法としての位置づけであり、根治を求めるのであれば、補助的な手段として利用するのが現実的です。

ボトックス注射を続けることで起きること

ボトックス注射を定期的に続けることで、汗の量をコントロールしやすくなる一方で、費用や手間といった負担も増していきます。年に複数回の施術が必要になるため、長期的には料金がかさむ点がデメリットとして挙げられます。また、繰り返しの施術により、身体がボトックスに慣れてしまう、つまり耐性がついて効かなくなる可能性もゼロではありません。このようなリスクを避けるためにも、施術の頻度や使用する製剤の量については、必ず皮膚科や整形医とよく相談しながら進めることが重要です。

ボトックスの「費用・料金」相場と保険適用条件

ボトックス治療を検討するうえで、気になるのが「いくらかかるのか」「保険は使えるのか」といった点です。ここでは、費用相場や保険適用の条件、他の治療法とのコスト比較について見ていきましょう。

自由診療での費用目安

ボトックス注射は多くの場合、自由診療扱いとなり、保険が適用されません。使用する製剤の種類や量、クリニックによって料金には幅がありますが、両脇での施術で一般的に3万円〜14万円程度が相場となっています。60〜100単位を使用する場合、1回あたりの注射料金は5万円前後が多く、地域やクリニックの方針によってはさらに高額になることもあります。安いところでは2万円台で提供されるケースもありますが、施術の質やアフターケアの体制にも注目して選ぶことが大切です。見た目の値段だけではなく、総合的な信頼性を判断材料としましょう。

保険適用になる条件とは?(重度多汗症)

重度の原発性多汗症と診断された場合、一部の皮膚科や病院ではボトックス注射が保険適用されることがあります。保険診療を受けるには、まず医師の診断と必要書類の提出が必要です。保険が適用されると、料金は1万円台〜2万円台に抑えられるケースが多く、非常に経済的です。ただし、保険対象となるのはあくまで「重度の多汗症」に限られており、わきがの治療や軽度の症状では適用されないため注意が必要です。また、保険診療に対応していない医療機関もあるため、事前に確認することが重要です。

コスパで見る治療法比較(他のわきが治療と比較)

ボトックス注射は初期費用が比較的安く、ダウンタイムもないため始めやすい治療法ですが、効果が一時的であるため、年に複数回の施術が必要となることがあります。これに対し、ミラドライは1回の費用が高くても、長期間効果が続くことがあるため、長期的に見るとコストパフォーマンスに優れているという声もあります。また、剪除法などの外科手術は保険が適用されれば費用を抑えることも可能ですが、傷跡やダウンタイムといった点でデメリットがあります。それぞれの治療法には一長一短があるため、自分の症状やライフスタイル、予算に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。

注射以外の治療方法と比較

ボトックス注射以外にも、わきがや多汗症に対する治療法はいくつか存在します。それぞれの治療法には特徴や費用、効果の持続期間に違いがありますので、ボトックスとの違いを比較しながら確認していきましょう。

ミラドライ・マイクロ波照射

ミラドライは、マイクロ波を利用して汗腺を熱で破壊する治療法です。皮膚を切ることなく、アポクリン汗腺とエクリン汗腺の両方に作用するため、わきがにも多汗症にも高い効果が期待できます。施術は1回で完了することが多く、効果も長期的に続くとされています。費用は高めで20万円〜30万円ほどが一般的ですが、長期的に見れば再施術の必要がない分、コスト面では優れているといえます。また、一時的に軽い腫れやしこりが出ることもありますが、ボトックスのように定期的な注射が不要である点も大きなメリットです。

外科手術(剪除法・吸引シェービング等)

外科的な手術では、アポクリン汗腺を直接取り除く剪除法や、皮膚を吸引して汗腺を取り除く吸引シェービング法などがあります。これらはわきがの根本治療として高い効果が期待されます。特に剪除法は、わきがの再発リスクを限りなく抑える治療法として評価されています。ただし、皮膚を切開するため傷跡が残る可能性があり、術後のダウンタイムも数週間と長めです。また、費用は保険が適用されれば数万円程度で済む場合もありますが、自由診療の場合は20万円以上かかることもあります。治療効果とダウンタイム、費用のバランスを見ながら慎重に選ぶ必要があります。

保険診療との違い・メリット・費用比較

保険診療は、主に多汗症などの明確な病状に対して適用され、治療費を大きく抑えることができるのが特徴です。一方で、わきがに対しては保険が適用されるケースが限られており、多くは自由診療となります。自由診療では、自分の都合で治療法や使用薬剤を選べる自由度はありますが、費用面では高額になりがちです。たとえばボトックス治療の場合、保険が効けば1万円台で受けられるものが、自由診療では5万円以上になることもあります。整形や美容目的では自由診療が主となるため、目的に応じた治療の選択が重要です。

Q&A/自分に合ったわきが・多汗症対策とは?

治療を検討している方の中には、「本当に自分に合っているのか」「効果がなかったらどうしよう」といった不安を抱える方も多いはずです。ここでは、よくある質問に答えながら、それぞれに合った対策方法を考えていきましょう。

ボトックスはこんな人におすすめ!

ボトックス注射は、軽度から中程度の多汗症や、わきがの匂いが気になるけれど手術には抵抗があるという方におすすめです。また、短期間だけでも汗を抑えたいという方や、イベント・面接・結婚式など大切な予定を控えている方にとっても、活用できる対策方法となります。整形手術のようなリスクがなく、手軽に受けられるため、初めて汗や匂いの治療を受ける方にも適しています。さらに、夏場だけの使用や季節限定の対策としてもおすすめで、比較的安い料金で始められる点も魅力のひとつです。

「効かない」と感じたときに見直すポイント

治療を受けても思うような効果が出ない場合には、いくつかの改善ポイントを見直してみましょう。まずは注射に使用した単位数が適切だったかを確認することが大切です。十分な量が注入されていなければ、期待した効果は得られません。また、施術を行った医師の技術や、注入の深さ・部位の正確さも大きく影響します。さらに、過去に頻繁にボトックス注射を受けていた方は、体内に抗体ができて効果が薄れる可能性もあります。これらを踏まえ、効果がなかったと感じた場合は皮膚科などの専門医に相談し、適切な対応を受けることが改善への近道となります。

まとめ

ボトックス注射は、ボツリヌス成分を使って汗腺の働きを一時的に抑えることで、脇汗や匂いを軽減する治療法です。多汗症には特に高い効果が期待でき、治療の持続期間や安全性、施術の手軽さからも多くの方に支持されています。わきがに対しては根本治療ではないものの、軽度な症状には十分な対策となる可能性があります。費用面では自由診療と保険診療の差が大きく、症状や目的に応じて適切な治療法を選ぶことが大切です。整形に抵抗がある方にも受けやすいこの治療法を、まずは医師に相談のうえ、自分に合ったスタイルで取り入れてみてはいかがでしょうか。

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この記事の監修

小西 恒 医師
小西 恒

2008年に自治医科大学医学部を卒業。2010年に大阪府立急性期総合医療センター産婦人科に勤務後、2014年に大阪府障害者福祉事業団すくよかで医療部長を務めました。2015年から大阪府健康医療部で地域保健課主査を歴任し、2017年から愛賛会浜田病院産婦人科に勤務。2020年より某大手美容外科で働き、2021年には小倉院と心斎橋御堂筋院の院長を務めました。2023年からはルヴィクリニック院長に就任しています。
【資格・所属学会】
ボトックスビスタ® 認定医、 ジュビダームビスタ® 認定医、 ジュビダームビスタ® バイクロス 認定医、 日本美容外科学会(JSAS) 正会員、 日本産科婦人科学会 会員、 日本産科婦人科学会 専門医、 日本医師会認定産業医、 母体保護法指定医

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