まずは目の下のボツリヌス治療がどのような注射で、どのような目的で行われるかを確認しましょう。たるみや小じわ、クマへのアプローチとしての適用範囲と限界を理解することで、施術の判断がしやすくなります。
ボツリヌス製剤を筋肉に注射すると、その筋肉の過緊張を緩める作用によりしわを減らすことができます。目の下では眼輪筋を対象にし、笑顔の際に目尻や下まぶたに現れる表情ジワを緩和し、クマ感やたるみの印象を和らげるような印象を与えることを目的としています。効果が現れるまでには通常数日から1週間程度かかり、筋肉の動きが穏やかになることで、小じわが薄くなり自然な笑顔が保たれるようになります。
目の下だけでなく、目尻(カラス足ジワ)や眉間のしわにもそれぞれボツリヌス注射は使われます。目尻注射では、笑った時にできるしわを和らげます。眉間では縦ジワを減らし険しい表情を和らげます。それぞれ位置と目的が異なり、使用する単位数や注射ポイントも変わります。ヒアルロン酸との併用で、涙袋の凹凸を整えたり、タレ目に見せる工夫も可能です。
目の下のたるみにより影が生じ、小じわや目の下のシワが目立つと、疲れ顔や老けた印象につながります。ボツリヌス治療では眼輪筋の微細な動きをコントロールし、クマによる影を軽減して、タレ目にならないリフトアップしたような印象を与えることが期待されます。症例によっては、涙袋の周辺に注射することで自然な膨らみを演出し、目頭から目尻にかけての表情を整えるケースもあります。
このセクションでは、目の下に関連する筋肉の構造と、ボトックスがどのように働いてシワやたるみに効果をもたらすのかを見ていきましょう。
眼輪筋は目の周囲を囲む筋肉で、笑ったときに特に働き、小じわやクマの原因となる縮みを生じさせます。皺眉筋は眉間に縦しわを作る筋肉で、目の下と連動して作用するため、両者のバランスが崩れると、目元全体のたるみや疲れ顔につながります。
表情ジワとは筋肉の収縮が皮膚に繰り返されてできるしわです。目の下や目尻に現れる笑いジワは、笑顔時に眼輪筋が過度に動くことで生じます。これを抑制することでしわが目立たなくなり、自然な笑顔でいても目元が滑らかに見えるようになります。
ボツリヌス注射は神経−筋接合部に作用し、筋肉の過活動を抑えます。注入位置が正確であるほど、表情が不自然にならず、適切に筋肉が緩むことで目の下のたるみやクマが目立たなくなります。注射後の内出血や軽い腫れは一時的な副作用で、多くは数日で自然に治ります。
ここでは、目の下ボトックスの具体的な効果や、実感までの時間、他治療との併用による相乗効果について見ていきましょう。
笑ったときにできる目尻や目の下の小じわは、注射後3〜7日で徐々に緩和し始め、1~2週間ほどで明確に効果を感じる方が多く、症例でも注入から2週間後に滑らかさを実感できたという報告があります。
眼輪筋の動きを抑えることで、目尻が上がりすぎていたつり目傾向も緩和され、目の下全体のバランスが整います。これにより目元が引き締まったような印象を与えることがあります。
たるみによる影は皮膚や脂肪の位置とともに形成されますので、ボトックスにより筋肉の緊張が和らぐと影が目立ちにくくなります。さらに涙袋付近のヒアルロン酸注入と組み合わせると、クマが目立ちにくくなる印象を与えることがあります。
ヒアルロン酸を涙袋や目の下の凹みに併用すると、ボトックスによる筋肉の緩和とともに、膨らみによる影軽減効果が増します。ボツリヌス注射だけではカバーできないボリューム不足やクマにも対応可能です。
ボトックス注射は、すぐに効果が現れるわけではありません。ここでは、目の下のボトックスにおける効果がいつ頃から現れ、どのくらい持続するのかを詳しく見ていきましょう。持続性や施術頻度の目安も知っておくことで、継続的な美容ケアに役立ちます。
目の下へのボトックス注射は、注入してすぐに変化があるわけではありません。一般的に、注射後3日目ごろから筋肉の緊張が徐々に和らぎ始め、5日から1週間で表情筋の動きが落ち着いてきます。このタイミングで「笑ったときにできるしわが薄くなってきた」と実感する人が多いです。
完全に定着した状態になるのは施術から2週間後が目安とされています。この時点で鏡を見たとき、目の下のたるみや小じわがやわらいで見えるようになり、メイクのノリや印象の変化を感じる方も多いでしょう。施術直後に内出血や腫れが見られることもありますが、1週間ほどで落ち着き、自然な見た目に戻る傾向です。
なお、効果の出方は個人差があり、肌質や筋肉の状態、生活習慣にも左右されます。マイクロ単位での注入であっても、位置が少し違うだけで仕上がりに差が出るため、医師の技術が非常に重要になります。効果を焦らず、経過を見守ることが大切です。
目の下に限らず、ボトックスの効果の持続期間は通常3〜4ヶ月程度とされています。しわやたるみに効果が出ている間は、目の下の印象が明るくなり、笑顔が明るい印象を与えるケースもあります。
ただし、効果が切れてくると再び筋肉が活発に動き始め、元の表情に戻っていきます。人によっては2ヶ月程度でしわが戻るように感じる場合もあるため、自分の肌状態やしわの程度を見ながら施術サイクルを調整していくとよいでしょう。
特に目の下は皮膚が薄く、少量のボトックスでも大きな変化を生む部位です。単位数が控えめである分、効果の継続期間も短めになりやすいため、必要に応じて定期的なメンテナンスを取り入れることで、美しい状態を長くキープできます。
ボトックスの施術間隔については、短期間で繰り返し打つのではなく、ある程度のインターバルを持つことが推奨されています。最も多いパターンは3〜4ヶ月ごとの施術です。ただし、目の下のような繊細な部位では、半年に1回のサイクルでも十分に効果を感じる方もいます。
月1回など短すぎる間隔で繰り返すと、ボツリヌス製剤に対して体が抗体を作ってしまい、将来的に効きにくくなる「耐性」のリスクがあるため注意が必要です。医師と相談しながら、自分に合った頻度を見極めていくことが、長期的な目元の美しさにつながります。
また、目の下のしわやたるみの状態に応じて、ヒアルロン酸やスキン治療(ルメッカなど)との組み合わせも検討すると、よりバランスの取れた仕上がりになります。継続施術では単純に同じことを繰り返すのではなく、経過を見ながら微調整していくスタイルが理想的です。
目の下のボトックス注射には効果が期待されますが、適切な位置や量の調整を怠るとリスクも生じます。ここでは副作用の特徴と症例ベースの注意すべきポイントを見ていきましょう。
注射直後には注入部に腫れや赤み、軽い痛みを感じることがあります。稀に内出血が出るケースもありますが、多くは注射後数日から1週間以内に自然に改善します。腫れや赤みが1週間以上続く場合は再診を検討すべき症例です。ヒアルロン酸注入のようなボリューム注入と異なり、マイクロボトックスでも内出血が出やすいため、細心の注意が必要です。
不適切な位置や過剰な単位数で注射すると、笑顔時のしわが消えすぎて不自然な表情になったり、つり目や涙袋の位置が崩れたりすることがあります。このような失敗は、筋肉の位置を正確に把握せずボツリヌス製剤を誤った層に注入した場合に起こりやすいです。自然な印象を維持するには、症例を見ながら注射位置を微調整し、注入量も十分に調整します。
極稀に眼瞼下垂が引き起こされ、片目だけ目が開きづらくなるなどの左右差が生じることがあります。これは目の下の筋肉ではなく、まぶた周囲の神経や筋膜に影響が及んだ結果で、医師の技術不足が原因になることが多いです。こうしたリスクは極力避けるため、症例数や実績がある医師選びが重要です。
ボツリヌス製剤に対してアレルギー反応や過敏症を持つ方、神経筋疾患を抱える方はボトックス注射が適さない可能性があります。過去に注射でひどく腫れた経験がある方や体調の変化が出やすい体質の方は事前に医師と相談し、リスクと効果を十分に話し合うことが必要です。
次に、施術でよく見られる失敗例と、その防止策について解説します。後悔しないためには、施術前の情報整理が重要です。
目の下のタレや小じわ、涙袋の位置は非常に繊細な構造です。医師が注射位置を誤ると、たるみが悪化したり涙袋の位置が変わり、不自然な印象を与えます。経験豊富な医師による症例の把握とデザインが欠かせません。
たるみを改善したかったのに逆にシワが強調された、笑顔時の表情が硬くなった、注射してもまったく効果を感じない――こうした失敗症例は報告されています。これらは注射量が少なすぎたり、注入位置がずれたりした場合に起こりやすく、施術前によくヒアリングすることが重要です。
施術前のカウンセリングでは、料金、注射の単位数、注入位置、過去の症例、想定される効果とリスクについて詳しく確認しましょう。特にヒアルロン酸との併用可能性、目の下のたるみやクマの状態を正確に診断してくれる医師を選ぶことが後悔を防ぐ第一歩です。
目の下の悩みには、シワだけでなく皮膚のたるみ、脂肪の突出、血管の影などが含まれます。ボトックス注射はあくまで筋肉を対象とする治療であり、脂肪や皮膚の状態には効果が薄いため、ルメッカやヒアルロン酸、マイクロスキン治療などと併用する計画が必要です。
ここでは実際の症例を軸に、自然な仕上がりと不自然な例の違いを詳しく見ていきましょう。
自然な症例では、涙袋や涙袋下の筋肉ラインを尊重し、注射位置が眼輪筋に沿って施されています。これに対し不自然な例では、笑顔時に表情が乏しくなったりつり目が強調されやすく、目頭から目尻までのバランスが崩れがちです。
30代では小じわや軽度のたるみが改善しやすく、効果も自然になじんだと感じる方もいます。40代では皮膚の弾力低下や脂肪の下垂が強く、ボトックスとヒアルロン酸併用が有効です。50代以降は筋肉と皮膚両方の状態を見て、治療計画を立てることが多いです。
男性は女性に比べて表情ジワが目立ちづらく、目の下へボトックスを施しても効果を感じづらい方がいます。ただしたるみやクマの影を和らげることで、若々しい印象を与えることがあるとされます。
施術前から回復までの流れと、注意点を具体的に整理しておきます。
クリニックではまず丁寧なカウンセリングを行い、目の下のたるみやクマの程度、涙袋の形状について診断し、症例写真を提示します。その上で注射位置や使用する薬剤、注入単位数を話し合い決定します。
注射には麻酔クリームや冷却を使用することが多く、痛みは最小化されています。注射自体は数分で終わり、全体で10分程度の施術時間です。患者の多くが軽い痛みと感じる程度で、注射後すぐに帰宅できるケースが大半です。
注射後は1~2日程度、腫れや内出血の可能性があるため、激しい洗顔やマッサージ、運動、アルコールは避ける必要があります。軽いメイクは可能ですが、強い摩擦は避け、数日で自然に落ち着くことが多いです。
目の下ボトックス注射の料金や相場情報について確認しておきましょう。
アラガンの正規品を使用した場合、信頼性が高く料金も高めになります。一方、海外製のボツリヌス製剤やジェネリック製剤ではコストが抑えられますが、品質やスキン感、効果に差があることがあり、注意が必要です。
極端に安価な料金設定は、注射量が不足していたり注入位置がずれている可能性があり、効果が不十分だったり不自然な仕上がりになったりするリスクがあります。
複数回契約や目の下+目尻などセット料金で割安になる場合がありますが、施術頻度や注入量の調整が重要です。契約条件を確認し、途中で変更やキャンセルが可能かどうかも確認しましょう。
最後に、安全で満足のできる施術を受けるためのクリニック選定のポイントを整理します。
目の下のシワやたるみに関する症例が豊富で、ブログやサイトに自然な笑顔の事例が掲載されているクリニックを選びましょう。不自然な失敗例やリスクも丁寧に掲載している場合、信頼度が高まります。
使用するボツリヌス製剤が正規品であること、保存状態や単位説明がされていることが重要です。ヒアルロン酸との併用を検討する場合も、両方の薬剤の品質を確認しましょう。
患者の痛みや副作用への不安に丁寧に応じるカウンセリング体制があることが重要です。料金、注射位置、注入量、効果とリスクの説明が明確で、疑問に対して親身に答えてくれるかが信頼の基準です。
目の下のボトックス注射とは、眼輪筋などの筋肉に作用させることでたるみや小じわを軽減し、クマの印象も和らげる治療です。効果は注射後3~7日であらわれ、2週間後には定着し、約3~4ヶ月持続します。施術には内出血や腫れ、痛みなどの一時的副作用や、不自然さや失敗のリスクもありますが、医師選びと症例確認を徹底すればリスクは抑えられます。料金はクリニックや製剤で異なり、安易な価格だけで判断せず、品質や症例数を重視しましょう。自然な笑顔とバランスの良い目元を目指すなら、信頼できる医師と丁寧なカウンセリングが不可欠です。
2008年に自治医科大学医学部を卒業。2010年に大阪府立急性期総合医療センター産婦人科に勤務後、2014年に大阪府障害者福祉事業団すくよかで医療部長を務めました。2015年から大阪府健康医療部で地域保健課主査を歴任し、2017年から愛賛会浜田病院産婦人科に勤務。2020年より某大手美容外科で働き、2021年には小倉院と心斎橋御堂筋院の院長を務めました。2023年からはルヴィクリニック院長に就任しています。
【資格・所属学会】
ボトックスビスタ® 認定医、
ジュビダームビスタ® 認定医、
ジュビダームビスタ® バイクロス 認定医、
日本美容外科学会(JSAS) 正会員、
日本産科婦人科学会 会員、
日本産科婦人科学会 専門医、
日本医師会認定産業医、
母体保護法指定医