近年、さまざまな薬が薬局で買えるようになり、便利に感じている方が多いと思います。
薬局に陳列されている薬の中には、薬剤師から説明を受けることで購入できるスイッチOTC医薬品というものがあるのをご存じでしょうか?
スイッチOTC医薬品とは、医師から処方されている医療用医薬品のうち、有効性、安全性が確立され市販化された薬のことです。
アフターピルは医師からの処方箋がないと入手することはできませんが、現在厚生労働省でスイッチOTC化が検討されています。
すでに海外ではアフターピルが薬局で購入できる国もあります。
日本でもスイッチOTC化が実現すれば、今後薬局で目にすることもあるかもしれません。
これから身近になっていくかもしれないアフターピルとはどのような薬なのでしょうか?
妊娠の可能性がある性行為をしてしまった時にのみ使用する経口緊急避妊薬です。
日本産婦人科学会は「わが国での内服による緊急避妊法の第一選択薬はノルレボ(アフターピルの一種)である」とガイドラインで示しています。
以前は中用量ピルを内服するヤッぺ法が一般的でしたが、避妊効果が高く、副作用(嘔気、嘔吐など)の発生率も低いことからノルレボが現在主流となっています。
アフターピルの主成分はプロゲステロン(黄体ホルモン)です。適量が分泌されると基礎体温を上げ、子宮内膜に受精卵が着床しやすい状態に整える働きをします。しかし内服することで成分が大量に体内に入ると、排卵が遅れ、子宮内膜が受精卵を受け入れられない状態になります。
排卵が遅れることで受精を阻止、仮に受精を阻止できなくても子宮内膜が受精卵を受け入れられない状態になっていれば着床ができません。受精、着床のどちらか一方でも阻害されれば、避妊が成功したことになります。
アフターピルは予期せぬ妊娠をした可能性がある時に内服する薬ですが、いつ内服しても効果があるわけではありません。
性行為後72時間もしくは120時間以内に内服するという決まりがあります。
この効果が見込める時間の制限が、アフターピルの市販薬化に向けて動き出した要因の一つです。
時間内であっても、性行為から時間が経つほど避妊効果は低下していきます。
現在多くの医療機関で取り扱われているアフターピルは、ノルレボとエラワンの二種類です。二つの薬の違いはこちらです。
名称 | ノルレボ | エラワン |
---|---|---|
成分 | レボノルゲストレル | ウリプリスタル酢酸エステル |
用法 | 性行為後72時間以内に内服 | 性行為後120時間以内に内服 |
24時間以内に内服した場合の妊娠阻止率 | 95%以上 | 98% |
その他 | 日本で初めて認可された経口緊急避妊薬。 多くの医療機関で取り扱われている。 |
日本ではまだ認可されていない。 海外では多くの国で主流となっており、日本でも取り扱う医療機関が増えてきている。 |
妊娠のプロセスは、排卵→受精→着床です。このどこか一部分でも成立しないと妊娠は出来ません。
アフターピルがどのような効果で避妊を成功させるのか、その全てはまだ解明されていません。
分かっていることは、アフターピルの主成分であるエストロゲンが体内に大量に入ることで、黄体形成ホルモンが抑制され、結果妊娠が阻止できるということです。
黄体形成ホルモンには
・排卵を誘発させる効果
・子宮内膜が受精卵を受け入れやすい状態に変化させる効果(成熟化)
上記があります。
下の表で性行為が行われた時期ごとに分けてアフターピルの内服効果を説明していきます。
排卵前 | 排卵後 |
---|---|
黄体形成ホルモンが抑制されると、排卵の時期が遅れます。精子が体内に入ってきても、排卵がされないので受精できません。結果、妊娠が成立しません。 | 黄体形成ホルモンが抑制されると子宮内膜が成熟化されず、受精卵の受け入れができません。性行為が行われたタイミングが排卵後で仮に受精してしまっていても、子宮内が受け入れる状態ではない=着床することができません。結果、妊娠が成立しません。 |
アフターピルにはノルレボとエラワンの2種類があります。
エラワンはノルレボに比べ内服できる時間の制限が長く、避妊効果も高くなっています。
しかし現時点では日本で認可されていないため、取り扱っている医療機関が多くはありません。
ノルレボは認可された緊急避妊薬のため、アフターピルを処方する多くの医療機関で取り扱われています。
ノルレボ | エラワン |
---|---|
72時間以内に1錠を内服してください。 | 120時間以内に1錠を内服してください。 |
①水またはぬるま湯で内服してください。カフェインが多く含まれている飲み物(お茶やコーヒーなど)では作用が強くでる可能性があります。
②内服した後2時間以内に嘔吐してしまった場合、薬の成分が十分体内に吸収されない可能性があります。追加で内服する場合もあるため、処方された医療機関に相談しましょう。
③BMI値が30以上の方は診察時に医師に相談してください。
ノルレボは一般的に効果が多少下がると言われていますが、エラワンは効果が認められています。
①重篤な肝障害がある方:肝臓へ負担がかかり、肝障害が悪化することがあります。
②妊娠中の方
③過去に内服した際に副作用が出たことがある方
①肝障害がある方
②心疾患や腎疾患の方、治療歴がある方:症状が悪化することがあります。
③授乳中の方:薬の成分が乳汁中に移行するため、内服後24時間は授乳を避けてください。
他にも、一緒に内服することでアフターピルの効果が得られなくなってしまう薬やサプリメントもあります。
・プロゲスチンを含む避妊薬
・抗けいれん薬
・セイヨウオトギリソウを含むサプリメントなど
診察を受ける際に普段内服している薬やサプリメントの情報は、必ず医師に伝えてください。
基本的にアフターピルは副作用が少ないといわれています。しかし主成分であるエストロゲンが大量に体内に入ることで、ホルモンバランスが崩れて体調に変化が生じることは事実です。
それでは一つずつ解説していきます。
以前主流だったヤッぺ法で約半数の方に嘔気が出ていたことから、ピルは副作用が強いと思っている方がいるかもしれません。近年処方されているアフターピルでは嘔気を訴える方は少なく、嘔吐する方に関しては1%以下です。
食後に内服することで嘔気、嘔吐が出にくいと言われているため、心配な方は内服のタイミングを食後にしましょう。もし内服から2時間以内に嘔吐してしまった場合は、薬が体内に十分取り込まれていない可能性があります。処方された医療機関に相談をしてください。
アフターピルで嘔吐をした経験のある方は、事前に医師に相談しましょう。嘔吐を抑える薬を一緒に内服することも可能です。
主成分のエストロゲンの影響から強い眠気が出る可能性があります。生理中に眠気を感じるのと同じホルモンの働きで、24時間以内には回復します。
消退出血とは子宮内膜が成熟化せず、子宮から剝がれ落ちる出血のことです。
生理とは異なり、出血量が少なくて短期間で終わるのが特徴です。
ほとんどの方は4~7日で消退出血があります。しかし内服のタイミングが排卵後だった場合は生理と同時に起こることもあります。内服後すぐに出血がなくても心配しなくて大丈夫です。まずは排卵日がいつなのかを確認してみてください。
3週間以上経ってから出血した場合は妊娠の可能性が考えられるため検査をおすすめします。
避妊効果を最大限に発揮するためには、なるべく早いアフターピルの内服が大事だということがお分かりいただけたでしょうか?
アフターピルのスイッチOTC化は厚生労働省の検討会で話し合いが行われていますが、まだ結論は出ていません。
薬局で購入ができない現時点でもしアフターピルが必要になった場合、おすすめなのがオンライン診療です。
婦人科で受診することになんとなく抵抗があったり、診察時間内に行くことができない、近くの病院で処方してもらえるのか分からない、などさまざまな理由で受診のタイミングが遅れてしまうこともあると思います。
オンライン診療では病院に行かずに医師の診察が受けられ、薬も希望する場所に届けてもらえます。プライバシーの観点でも安心です。
メディカルアルファクリニックではノルレボのジェネリック医薬品であるマドンナ、エラワンのジェネリックであるエラのオンライン診療を実施しています。
2008年に自治医科大学医学部を卒業。2010年に大阪府立急性期総合医療センター産婦人科に勤務後、2014年に大阪府障害者福祉事業団すくよかで医療部長を務めました。2015年から大阪府健康医療部で地域保健課主査を歴任し、2017年から愛賛会浜田病院産婦人科に勤務。2020年より某大手美容外科で働き、2021年には小倉院と心斎橋御堂筋院の院長を務めました。2023年からはルヴィクリニック院長に就任しています。
【資格・所属学会】
ボトックスビスタ® 認定医、
ジュビダームビスタ® 認定医、
ジュビダームビスタ® バイクロス 認定医、
日本美容外科学会(JSAS) 正会員、
日本産科婦人科学会 会員、
日本産科婦人科学会 専門医、
日本医師会認定産業医、
母体保護法指定医