GLP-1ダイエットの危険性とは?リスクを正しく理解し安全に使うためのポイント

2025.11.13
美容コラム

GLP-1とは?本来の目的とダイエットで使われる理由

GLP‑1(グルカゴン様ペプチド‑1)は、消化管から分泌され、食後の血糖上昇を抑えるホルモンです。もともとの目的は糖尿病治療であり、インスリン分泌を促し、グルカゴンの過剰分泌を抑えるなどの働きをします。その作用を応用して、近年では「食欲抑制」「満腹感持続」といった作用が注目され、体重管理を目的とした利用も検討されるようになっています。とはいえ、GLP‑1を使えば誰でも安全に痩せるわけではなく、ネット上やSNSで見かける「簡単に痩せる」という宣伝にはリスクが潜んでいます。本章では、GLP‑1の基本作用と、なぜ体重減少にも使われるようになったかをまず押さえておきましょう。

GLP-1の基本的な作用と糖尿病治療での役割

食事をとると腸からGLP-1が分泌され、それが膵臓に作用してインスリンの分泌を促進します。同時に、過剰なグルカゴン(血糖を上げるホルモン)の分泌を抑えることで血糖の急激な上昇を防ぎます。また、GLP-1は胃から腸への食べ物の移動を緩やかにする作用を持っており、これが満腹感の持続と血糖の安定化につながります。こうした作用を医薬品として模倣または強化したのがGLP-1受容体作動薬であり、糖尿病治療において重要な役割を果たしてきました。

この薬は、単独使用時には低血糖を起こしづらい特徴を持つ一方で、他の糖尿病薬と併用すると低血糖を招く可能性があります。したがって、患者の血糖状態、併用薬、腎機能などを慎重に見ながら投与することが求められます。こうした医療用としての使われ方を背景に、体重を減らすという視点が付随して注目されるようになったのです。

なぜGLP-1が体重減少にも用いられるのか?

GLP‑1薬には三つの主要な作用が重なって働くことにより、体重減少を後押しします。まず、食欲抑制作用によって、食事量が減る傾向があると考えられています。次に、胃排出を遅くする働きがあるため、満腹感を比較的長く感じることが報告される場合もあります。そして、血糖変動を穏やかに保つことでインスリンの過剰分泌を防ぎ、脂肪の蓄積を抑える方向に体を誘導します。さらに、近年では“食欲抑制”や“満腹感維持”を主目的とする利用が検討される例もありますが、必ずしも期待どおりの変化が得られるわけではありません。

これらの作用が組み合わさることで、薬を使った場合でも、適切な運動や食事制限を併用すれば、注射や飲み薬を使って得られる減量効果が現実味を帯びます。ただし、この効果には個人差が大きく、年齢、基礎代謝、ホルモン状態、既往症、体質などが影響します。50代や中高年層、さらにはGLP‑1ダイエット 40代という世代では、筋肉量低下や代謝の鈍化などの影響を受けやすくなり、慎重な判断が必要です。

GLP-1ダイエットの危険性とは?考えられるリスク一覧

GLP‑1ダイエットには魅力的な面がありますが、リスクや注意点を正しく理解しておかないと問題を引き起こすことがあります。本章では、主な危険性を一覧形式で示しつつ、それぞれの内容を解説します。

よくある副作用と体への影響

GLP‑1薬の使用で最も頻度が高い副作用は胃腸症状です。吐き気、下痢、便秘、腹痛、食欲低下などが典型的で、使用開始時期に強く出る傾向があります。臨床試験では、最大で半数近くに吐き気が報告されている例もあります。多くの場合は時間とともに軽減するものの、これらが不快で続くと投与を中止する理由になることもあります。

また、まれですが膵炎・胆石・腎機能障害・胆道系トラブルなどの重篤な副作用の報告もされています。特に急性膵炎は腹痛や嘔吐を伴うため、これらの症状が現れたらすぐに中止して医療機関を受診する必要があります。

併用薬によっては低血糖のリスクも無視できません。GLP‑1単独使用時は低血糖リスクは比較的低いとされますが、インスリンやスルホニル尿素薬などと併用すると低血糖を起こしやすくなることがあります。このように、効果と同時に身体への負荷も一定存在する点を理解しておくべきです。

食欲抑制作用によって、食事量が減る傾向があると考えられています。次に、胃排出を遅くする働きがあるため、満腹感を比較的長く感じることが報告される場合もあります。また、胃排出遅延が強く働きすぎると、消化不良、吸収異常、胃の残留感などに悩む可能性もあります。

医療機関の処方でないGLP-1使用に潜む危険性

正規の医療処方を経ずにネットや非正規ルートでGLP‑1薬を入手することには非常に大きなリスクがあります。まず、品質保証のない偽薬や不純物混入物、成分不明薬が混入している可能性があります。これらを体内に取り入れることは思わぬ健康被害を招くおそれがあります。米国FDAは、不正に販売されたセマグルチドや類似物質を「研究用」などと偽って販売する業者に対し警告を発しており、こうした製品の使用は強く戒められています。

また、無診断・自己判断での使用は薬の用量過誤を招くリスクがあります。特に調剤・混合(compounded)製剤は一部で過量投与や不正確な濃度表示に関する報告があり、重篤な副作用を引き起こす場合があります。誤った投与方法やラベル誤記、濃度違い、混合ミスなどが実例として報告されているため、信頼できる医療ルート以外からの入手は極めて危険です。

さらに、保険適用されない目的での使用が広がる中、コストを抑えるため非正規ルートに流れがちになりますが、法律的・倫理的な問題も伴います。こうした傾向は「安さ重視」の消費行動を招き、安全性を犠牲にするケースを生み出す問題ともなります。

誤解されがちな「痩せる薬」としてのリスク

GLP‑1薬は「痩せる薬」として宣伝されやすく、その表現によって誤解を生むリスクがあります。薬のみで大幅な体重変化が得られるとは限らず、あくまで生活習慣改善を支える補助的ツールです。過度な期待や無理な併用、自己判断での長期使用は、リバウンドや健康被害につながる可能性があります。

特に年齢を重ねた人(たとえば50代以上)では代謝が落ちており、急激な減量を行うと筋肉や骨への影響が出やすくなります。これにより、体型の変化とともに、体力や関節への影響が懸念される場合もあります。こうした点を無視した宣伝文句を信じて使い始めることは、思わぬ問題を引き起こす危険があります。

GLP-1による体重減少の仕組みと限界

GLP‑1薬がなぜ体重を下げ得るのか、その仕組みを理解することは、危険性を見極めながら使ううえで重要です。同時に、すべての人に効果が出るわけではない“限界”も把握しておくべきです。

食欲抑制・胃排出の遅延などの生理的作用

GLP‑1薬は、胃から腸へ食べ物を送る動きを抑制し、消化をゆるやかにすることで、満腹感を持続させます。これにより、食欲が自然に抑えられ、摂取カロリーを減らす方向へ体が動きます。また、血糖の急激な変動を抑えることで、インスリンの過剰反応を防ぎ、脂肪蓄積を抑制する効果も得られます。

さらに、GLP‑1薬は肝臓での糖産出を抑えたり、骨格筋でのインスリン感受性を改善したりする作用も報告されており、これらが統合的に働くことで体重減少を促す可能性があります。

ただし、これらの作用は薬が作用する範囲や体質に左右されやすく、必ずしも全員に効くとは限りません。

すべての人に効くわけではない理由とは?

GLP‑1ダイエットがすべての人に効果的とは限らない理由として、いくつかの要因が考えられます。まず、年齢の影響があります。50代以上になると基礎代謝が落ちたり、ホルモンバランスや筋肉量の低下が見られやすく、薬の効果が出にくくなる場合があります。次に、もともとのベース代謝が低い人は、同じ量の薬を使っても体重が落ちにくいことがあります。また、胃腸や肝臓、腎臓の持病を抱えていたり、他の糖尿病治療薬を併用している場合には、薬の効き方や副作用のリスクが変わる可能性があります。さらに、日常生活の中で運動習慣がなかったり、食事内容に偏りがあると、薬だけでは十分な減量効果を得ることは難しいでしょう。そして最後に、遺伝的な体質やGLP‑1受容体に対する感受性の違いも関係します。人によってはこの受容体が反応しにくく、期待する効果が得られないこともあります。

安全にGLP-1を使用するために知っておくべきこと

GLP‑1ダイエットを試すなら、リスクを抑えながら安全性を担保するためのポイントを押さえておくことが大切です。本章では、医師との相談、体質・既往歴の違いによるリスク、そして服用方法・用量を守ることの重要性を説明します。

医師との相談が必要な理由

GLP‑1薬は医療用医薬品であり、個人の状況に応じた適切な診断・処方が不可欠です。医師は、過去の病歴、血液検査値、薬の併用状況などを踏まえてリスクを評価し、適切な用量やモニタリング計画を立てることができます。また、ネットで情報を得たとしても、それは一般論であり、あなたの体には当てはまらないことが多いです。診断なしに始めることは、大きな危険性を伴います。

体質や既往歴によって変わるリスク

特定の体質や既往歴を持つ人は、GLP‑1薬の使用に際してより慎重になる必要があります。たとえば、膵臓疾患歴、消化管疾患、腎機能低下、肝機能障害、甲状腺の問題、または過去に薬物アレルギー歴のある人などです。これらの条件がある人では副作用が出やすく、低血糖や消化器症状などのリスクが高まる可能性があります。年齢(とくに50代以上)に伴う臓器機能低下にも配慮が必要です。

服用方法・用量を守ることの重要性

GLP‑1薬は、決められた用量と服用方法を守ることで、安全性と効果を両立できます。過剰な用量を自己判断で増やしたり、飲み方を守らなかったりすると、副作用が強く出やすくなります。特に、胃腸への負荷、低血糖、栄養吸収異常などを引き起こすリスクがあります。また、運動習慣を併用する際も急激なエネルギー制限と組み合わせると体に負荷をかけすぎる恐れがあるため、適切なバランスを考慮する必要があります。

GLP-1ダイエットに関する正しい情報の見分け方

GLP‑1を安全に使うためには、正確な情報を得ることが前提です。SNSや広告での誤情報に惑わされず、信頼できる情報源と医療機関を選ぶ力をつけましょう。

SNS・広告に注意すべき理由

SNSやネット広告には「劇的なビフォーアフター」や「短期間で痩せる」といったキャッチコピーが氾濫しています。しかし、これらは極端な例を用いてセンセーショナルに見せていることが多く、実際には効果が出にくい人、リスクを経験する人もいます。広告主が利益目的で情報をコントロールしていることもあり、正確性・中立性に欠ける情報が混在しています。こうした情報によって無理なダイエットを始めて健康を害するケースが報告されています。

信頼できる情報源と医療機関の選び方

まず学術論文や専門誌、医学会ガイドラインなどを情報源としてチェックすることが望ましいです。GLP‑1薬に関する論文には、副作用率や安全性評価、長期追跡データなどが記されており、より信頼性が高いと言えます。また、医師や専門クリニックを選ぶ際は、GLP‑1治療の経験がある内分泌科・糖尿病科・肥満治療専門の医師がいるかを確認するとよいでしょう。クリニックのサイトで治療実績や症例を公開しているか、説明が丁寧かどうかも判断材料になります。

広告やネットの情報ばかりを鵜呑みにせず、複数の信頼できる情報を比較し、最終的には医師の判断を重視することが、GLP‑1ダイエットを安全に行うための基本です。

まとめ

GLP‑1ダイエットは、薬理的な作用によって食欲抑制や血糖の安定化を通じて体重を落とす可能性を秘めています。しかし、その危険性を理解しないまま使い始めると、低血糖、膵炎などのリスクを伴う可能性があります。

GLP‑1薬を使うなら、まずは医師との相談が不可欠です。体質、既往歴、併用薬、年齢などに応じてリスクが変わるため、自分だけの安全な処方プランを立てるべきです。薬の飲み方・用量を守ること、運動・食事・生活習慣の改善を併用することが、体重減少を持続させ、リバウンドを防ぐための鍵です。

また、ネット上の誇張された広告や情報には警戒が必要です。「痩せる薬」や簡単に痩せるという言葉に踊らされず、信頼できる論文や医療機関の情報をもとに判断することが大切です。

GLP‑1ダイエットを選択肢の一つとするのは構いません。ただし、「効果を出したい」「安全に使いたい」という願いを成し遂げるには、リスクをきちんと認識し、正しい知識と慎重な姿勢を持って取り組むことが不可欠です。自己判断で始めるのではなく、医師とともに、安全性と効果を両立させる計画を立てて進めましょう。

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この記事の監修

小西 恒 医師
小西 恒

2008年に自治医科大学医学部を卒業。2010年に大阪府立急性期総合医療センター産婦人科に勤務後、2014年に大阪府障害者福祉事業団すくよかで医療部長を務めました。2015年から大阪府健康医療部で地域保健課主査を歴任し、2017年から愛賛会浜田病院産婦人科に勤務。2020年より某大手美容外科で働き、2021年には小倉院と心斎橋御堂筋院の院長を務めました。2023年からはルヴィクリニック院長に就任しています。
【資格・所属学会】
ボトックスビスタ® 認定医、 ジュビダームビスタ® 認定医、 ジュビダームビスタ® バイクロス 認定医、 日本美容外科学会(JSAS) 正会員、 日本産科婦人科学会 会員、 日本産科婦人科学会 専門医、 日本医師会認定産業医、 母体保護法指定医

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