防風通聖散がダイエット効果を期待される理由は、単一の作用によるものではなく、複数の生薬が連携して体に働きかけるためです。
具体的には、エネルギー代謝を高めて脂肪の燃焼を促す作用、便通を改善して老廃物の排出を助ける作用、そして体内の余分な水分を排出してむくみを取る作用という、3つの主要なメカニズムが関わっています。
これらの作用が複合的に働くことで、体重減少や体質の改善をサポートします。
防風通聖散には、交感神経を活性化させることでエネルギー代謝を高める生薬が含まれています。
特に麻黄に含まれるエフェドリンは、体温を上昇させ発汗を促し、エネルギー消費を増やす働きがあります。
また、荊芥や連翹、生姜なども体の熱産生を助け、代謝を活発にする作用をサポートします。
これらの働きにより、体に蓄積された、特にお腹周りの皮下脂肪の分解と燃焼が促進されます。
運動と組み合わせることで、より効率的に脂肪をエネルギーとして消費することが期待できるため、ダイエット中のサポートとして役立ちます。
防風通聖散が持つ重要な作用の一つに、便通促進効果があります。
配合されている大黄や芒硝といった生薬が、大腸の蠕動運動を活発にし、便に水分を含ませて排出しやすくする働きをします。
これにより、頑固な便秘が改善され、腸内に溜まった老廃物や不要物がスムーズに体外へ排出されます。
便通が整うことで、ぽっこりとしたお腹の張りが解消され、見た目にもすっきりとした印象を与えます。
また、腸内環境が改善されることは、栄養の吸収効率を整え、不要なものを溜め込みにくい体質作りにも貢献します。
体内の水分代謝が滞ると、細胞の間に余分な水分が溜まり、「むくみ」として現れます。
むくみは体重増加の一因となるだけでなく、血行不良や冷えを引き起こすこともあります。
防風通聖散には、滑石(カセキ)や白朮(ビャクジュツ)といった利尿作用を持つ生薬が含まれており、腎臓の働きを助けて尿の排出を促します。
これにより、体内に溜まった過剰な水分や塩分が排出され、むくみの改善につながります。
むくみが取れると、体重が減少するだけでなく、フェイスラインや足がすっきりとし、体全体が軽く感じられる効果も期待できます。

市販の防風通聖散は、ツムラやロートをはじめとする様々な製薬会社から販売されています。
どの製品を選べば良いか迷う場合、有効成分の含有量、剤形(飲みやすさ)、そしてコストパフォーマンスという3つの観点から比較検討するのがおすすめです。
これらの違いを理解することで、ご自身の体質やライフスタイル、継続しやすさに合った製品を見つけやすくなります。
ここでは、代表的なツムラとロートの製品を例に、それぞれの特徴を詳しく見ていきます。
| 項目 | 新・ロート防風通聖散錠満量(ロート製薬) | ツムラ漢方防風通聖散エキス顆粒(ツムラ) |
|---|---|---|
| 処方タイプ | 満量処方(原典記載の最大量) | 医療用の1日量の1/2 |
| 有効成分の含有量 | 生薬を原典通りの最大量配合 | 医療用の半量を配合 |
| 効果の期待度 | 高い | 中程度 |
| 胃腸への負担 | やや強い(注意が必要) | 比較的穏やか |
| 特徴・おすすめ対象 | 効果を重視する方向け | 初心者・胃腸が弱い人向け |
| 備考 | 満量処方で高い効果が期待できるが、副作用リスクにも注意 | 穏やかに作用し、初めて試す人にも適している |
防風通聖散を選ぶ際の一つの基準が、有効成分の含有量です。
「満量処方」とは、漢方の原典に記載されている生薬の1日最大量を配合したものを指します。
ロート製薬の「新・ロート防風通聖散錠満量」は、この満量処方に該当し、高い効果が期待できます。
一方、ツムラの市販薬「ツムラ漢方防風通聖散エキス顆粒」は、医療用で用いられる1日量の1/2量が配合されています。
満量処方の製品は効果が高い分、胃腸への負担など副作用のリスクも考慮する必要があります。
初めて試す方や胃腸が弱い方は、含有量が少ないものから始めるという選択肢もあります。
自分の体質に合わせて選ぶことが肝心です。
| 項目 | ツムラ漢方防風通聖散エキス顆粒(ツムラ) | 和漢箋 防風通聖散錠(ロート製薬) |
|---|---|---|
| 剤形 | 顆粒 | 錠剤 |
| 味・香り | 漢方特有の風味と香りあり | ほとんど感じない |
| 服用方法 | 水またはお湯に溶かして服用可能。香りによる効果も期待。 | 水でそのまま服用でき、手軽。 |
| 飲みやすさ | 風味が苦手な人にはやや飲みにくい | 味や匂いが気にならず飲みやすい |
| 携帯性 | 個包装で持ち運び可能だが、開封がやや手間 | 錠剤で携帯しやすく、外出先でも便利 |
| 服用量 | 1回分の量が比較的少なめ | 1回あたりの粒数が多い製品もある |
| おすすめ対象 | 香りを楽しみたい・伝統的な服用方法を好む方 | 味や香りが苦手・外出先で手軽に服用したい方 |
防風通聖散の市販薬には、主に顆粒タイプと錠剤タイプがあります。
ツムラの製品は顆粒タイプが中心で、漢方特有の風味や香りがあります。
お湯に溶かして服用することもでき、香りによる効果も期待できるのが特徴です。
一方、ロート製薬の「和漢箋」シリーズは錠剤が主流です。
錠剤は味や香りを感じにくく、水で手軽に服用できるため、漢方の風味が苦手な方や、外出先で飲む機会が多い方にとっては便利です。
1回の服用量(粒数)が多い製品もあるため、飲み込みやすさも考慮すると良いでしょう。
毎日続けるものだからこそ、自分がストレスなく服用できる剤形を選ぶことが重要です。
| 項目 | 新・ロート防風通聖散錠満量(ロート製薬) | ツムラ漢方防風通聖散エキス顆粒(ツムラ) |
|---|---|---|
| 価格帯(参考) | 約5,000〜7,000円(360錠) | 約3,000〜4,500円(48包) |
| 1日あたりの服用量 | 12錠(1日3回×4錠) | 1包(1日2回) |
| 1日あたりの目安コスト | 約150〜200円程度 | 約100〜130円程度 |
| コストパフォーマンス | 高い効果が期待できるが価格も高め | 比較的続けやすい価格帯 |
| 大容量パッケージの有無 | あり(720錠など)で単価を抑えられる | あり(96包など)で1包あたりコスト低下 |
| 購入しやすさ | ドラッグストア・通販サイトで広く入手可能 | ツムラブランドで信頼性が高く流通も安定 |
| おすすめ対象 | 効果重視で多少価格が高くても続けたい方 | コスパを重視し、無理なく続けたい方 |
防風通聖散は一定期間継続して服用することが推奨されるため、価格やコストパフォーマンスも重要な選択基準です。
製品の価格は、有効成分の含有量や内容量によって異なります。
一般的に、満量処方の製品は価格が高くなる傾向にあります。
購入時には製品全体の価格だけでなく、1日あたりの費用を計算して比較すると、長期的な負担が分かりやすくなります。
例えば、大容量のパッケージを選ぶと1日あたりのコストを抑えられる場合があります。
ドラッグストアのセールやオンラインストアの価格も比較し、無理なく続けられる価格帯の製品を選ぶことが、継続的な服用と効果の実感につながります。

防風通聖散は医薬品であり、その効果を十分に得るためには定められた用法・用量を守ることが不可欠です。
適切なタイミングで服用し、一定期間継続することで、体質の変化を実感しやすくなります。
ここでは、基本的な飲むタイミングと、効果が現れるまでの期間の目安について解説します。
自己判断で飲む量を変えたり、すぐに諦めたりせず、正しい知識を持って服用を続けることが、目標達成への近道です。
漢方薬は、食事の影響を避けて成分の吸収を良くするため、空腹時に服用するのが一般的です。
防風通聖散も同様に、「食前」または「食間」に水または白湯で服用することが推奨されます。
「食前」とは食事の約30分前のこと、「食間」とは食事と食事の間、つまり食後約2時間後を指します。
胃の中に食べ物が入っていない状態で飲むことで、生薬の成分が効率よく吸収され、効果を発揮しやすくなります。
もし飲み忘れてしまった場合は、気づいた時点で服用しても構いませんが、次の服用時間が近い場合は1回分を飛ばすなど、製品の説明書に従ってください。
胃腸が弱い方は、食後に飲むことで負担が軽減される場合もあります。
防風通聖散の効果の現れ方には個人差があり、体質や症状の程度によって異なります。
便秘の改善については、服用開始後、数日から1週間程度で効果を感じる人が多いです。
一方で、肥満症の改善やむくみの解消といった体質に関わる効果については、すぐには現れません。
体の内側から変化を促すため、少なくとも1ヶ月以上は継続して服用することが一つの目安とされています。
効果が感じられないからといって短期間でやめてしまうのではなく、まずは用法・用量を守って一定期間続けてみることが必要です。
もし1ヶ月以上服用しても何も変化が見られない場合は、薬が体質に合っていない可能性も考えられるため、医師や薬剤師に相談してください。

防風通聖散は天然の生薬から作られていますが、医薬品である以上、副作用のリスクも存在します。
効果を期待するだけでなく、どのような副作用が起こりうるのか、またどのような人は服用に注意が必要なのかを事前に理解しておくことは、安全に使用する上で非常に重要です。
特に注意したい初期症状や、長期服用時のリスク、そして服用が適さない人の特徴について確認しておきましょう。
防風通聖散の服用を始めた初期に、副作用として消化器系の症状が現れることがあります。
具体的には、胃の不快感や食欲不振、吐き気、腹痛、下痢などです。
特に、便通を促す作用があるため、もともと胃腸が弱い人や体質によっては、お腹が緩くなったり下痢が続いたりすることがあります。
また、皮膚に発疹やかゆみが出るといったアレルギー症状が起こる可能性も否定できません。
これらの症状が軽い場合は、体が慣れるにつれて治まることもありますが、症状が強く出たり、長く続いたりする場合には、服用を中止し、製品の添付文書を持って医師や薬剤師に相談することが必要です。
長期間にわたって防風通聖散を服用する場合、まれに重篤な副作用が起こる可能性も知っておく必要があります。
代表的なものとして、間質性肺炎、偽アルドステロン症、ミオパチー、肝機能障害などが挙げられます。
例えば、息切れや空咳、発熱が見られる場合は間質性肺炎、手足のしびれやむくみ、血圧上昇があれば偽アルドステロン症の初期症状かもしれません。
また、全身のだるさや皮膚・白目が黄色くなるなどの症状は肝機能障害のサインです。
これらの症状は発生頻度が非常に低いものですが、万一体調に異変を感じた場合は、直ちに服用を中止して医師の診察を受けてください。
防風通聖散は、体力があり、お腹に脂肪が多く、便秘がちな「実証」タイプの人に適した漢方薬です。
そのため、もともと体力がなく疲れやすい虚弱体質(虚証)の人や、胃腸が非常に弱い人、下痢をしやすい人には不向きです。
これらの人が服用すると、下痢や腹痛などの副作用が強く出たり、かえって体力を消耗してしまったりする恐れがあります。
また、妊娠中や授乳中の女性、高齢者、高血圧や心臓病、腎臓病などの持病がある方、他の薬(特に下剤)を服用している方は、自己判断での服用は避け、必ず事前に医師や薬剤師に相談することが求められます。

防風通聖散は肥満症の改善をサポートする医薬品ですが、飲むだけで劇的に痩せる魔法の薬ではありません。
その効果を最大限に引き出し、健康的なダイエットを成功させるためには、漢方薬の服用と並行して生活習慣を見直すことが不可欠です。
特に「食事」と「運動」は、ダイエットの基本であり、防風通聖散の働きを助ける重要な要素となります。
ここでは、ダイエットの相乗効果を高めるための2つのコツを紹介します。
防風通聖散を服用しているからといって、これまで通りの食生活を続けていては、十分な効果は得られません。
特に、高カロリーな食事や脂質の多い揚げ物、糖分の多い菓子類やジュースの摂取は控えるべきです。
1日3食、栄養バランスの取れた食事を基本とし、野菜やきのこ、海藻類などから食物繊維を十分に摂ることを心がけてください。
食物繊維は、防風通聖散の便通改善作用をサポートし、腸内環境を整えるのに役立ちます。
また、急激な食事制限は長続きせず、リバウンドの原因にもなるため、無理のない範囲で食事内容を見直し、継続することが重要です。
防風通聖散には、脂肪の燃焼を促進する働きがありますが、その効果は運動を組み合わせることで一層高まります。
日常生活に軽い運動を取り入れることで、エネルギー消費量が増え、より効率的に体脂肪を減らすことが可能になります。
ウォーキングやジョギング、サイクリングといった有酸素運動は、脂肪燃焼に効果的です。
また、筋力トレーニングを取り入れると基礎代謝が上がり、痩せやすく太りにくい体質へと改善されます。
最初から無理をする必要はなく、エレベーターを階段に変える、一駅手前で降りて歩くなど、できることから始めて習慣化していくことが成功の鍵です。

防風通聖散は体力があり、腹部に皮下脂肪が多く便秘がちな人の肥満症に対して、代謝促進、便通改善、水分排出の3つの作用でアプローチする漢方薬です。
市販薬にはツムラやロートなどから様々な製品が販売されており、有効成分の含有量(満量処方か)、剤形、価格などを比較し、自身の体質やライフスタイルに合ったものを選ぶことが大切です。
服用する際は、食前または食間のタイミングを守り、効果を実感するためにも最低1ヶ月は継続することが推奨されます。
ただし、医薬品であるため下痢や胃の不快感などの副作用のリスクもあり、体質に合わない人もいます。
漢方薬だけに頼るのではなく、バランスの取れた食事や適度な運動を組み合わせることが、健康的なダイエットの成功につながります。
不明な点があれば、医師や薬剤師に相談してください。
2008年に自治医科大学医学部を卒業。2010年に大阪府立急性期総合医療センター産婦人科に勤務後、2014年に大阪府障害者福祉事業団すくよかで医療部長を務めました。2015年から大阪府健康医療部で地域保健課主査を歴任し、2017年から愛賛会浜田病院産婦人科に勤務。2020年より某大手美容外科で働き、2021年には小倉院と心斎橋御堂筋院の院長を務めました。2023年からはルヴィクリニック院長に就任しています。
【資格・所属学会】
ボトックスビスタ® 認定医、
ジュビダームビスタ® 認定医、
ジュビダームビスタ® バイクロス 認定医、
日本美容外科学会(JSAS) 正会員、
日本産科婦人科学会 会員、
日本産科婦人科学会 専門医、
日本医師会認定産業医、
母体保護法指定医